自律神経はどのようなものか

自律神経(目次)

1、自律神経の概要
2、神経の可塑性:使えば向上し、使わなければ低下する
3、自律神経の「不調」と「病」の違い
4、自律神経の解剖学的な位置
5、中枢神経と抹消神経:どちらが問題か
6、脳神経(中枢神経)と自律神経の関係
ー目の使い方で起こる自律神経の不調
7、交感神経の過剰興奮 症状と背景
8、副交感神経(迷走神経)の低下が引き起こす問題
9、参考文献

自律神経の概要

自律神経とは、意識とは無関係に身体の恒常性(ホメオスタシス)を維持するための神経系です。大きく「交感神経」と「副交感神経」の二系統に分類されますが、実際には多数の神経が複合的に作用しています。(自律神経機能障害https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK430888/

自律神経の主な働きは以下の通りです。

  • 自律神経の作用循環器系:心拍数・血圧・血流の調整
  • 消化器系:胃腸の蠕動運動、消化液の分泌
  • 内分泌系:ホルモン分泌の調整
  • 免疫系:免疫細胞の活性化・抑制
  • 体温調節:発汗・血管拡張・収縮
  • 睡眠・覚醒:概日リズム(サーカディアンリズム)の調整

これらはすべて無意識下で自動的に制御されており、私たちが「意図して動かす」ことのできない領域です。しかし、適切な刺激とリハビリによって機能を強化・回復させることは可能です。

また、自律神経は単独で機能するのではなく、それぞれが補完し合いながら身体の平衡を保っています。ある神経の機能が低下すると、他の神経が代償的に仕事量を増やします。この代償機能が続くと過負荷となり、やがて代償していた神経も機能を失います。こうして初期の「機能低下による不調」が慢性的な「機能不全による病」へと移行していくことがあります。

神経の可塑性:使えば向上し、使わなければ低下する

神経には「可塑性(neuroplasticity)」という重要な特性があります。これは、繰り返しの刺激によって神経同士のシナプス結合が強化・再編成される能力です。

わかりやすい例として「スポーツの上達」があります。練習を繰り返すことで運動に必要な神経回路が強固になり、パフォーマンスが向上します。逆に練習をやめると、その神経回路は徐々に退縮します。これは運動神経だけでなく、感覚神経も自律神経も同様です。

自律神経の治療とは、「どの自律神経の機能に問題が起きているか」を特定し、適切な刺激を繰り返すことで自律神経機能の改善を促すことにあります。

自律神経の「不調」と「病」の違い

自律神経の問題は、段階を経て「病」へと移行する場合があります。

【不調の段階】 自律神経の機能が低下しているものの、内臓・ホルモン・免疫などの器質的な異常にはまだ至っていない状態です。検査では「異常なし」と言われるにもかかわらず、倦怠感・睡眠障害・消化不良・情緒不安定などの症状が続くのがこの段階です。神経には可塑性があるため、適切なリハビリによって回復が見込めます。

【病へ移行】 不調が長期化し、臓器機能やホルモン分泌に器質的・機能的な異常が定着した状態です。この段階で初めて「病名」がつき、薬物療法の対象となります。

*自律神経機能の問題から病へと至る場合は、当院のカイロプラクティックが有効です。
器質的疾患から自律神経の問題が出ている場合は、病院が有効です。

【事例】 30代女性。数年前から「胃の不快感・便秘・睡眠の浅さ」が続いているが、消化器内科では「異常なし」と診断された。
これは典型的な「不調の段階」であり、自律神経の機能低下が消化器系・睡眠に影響を及ぼしていると考えられます。この段階であれば、改善が期待できます。

 

自律神経の解剖学的な位置

自律神経がどこに存在するかを把握することは、
問題の特定と治療において非常に重要です。

自律神経全体図

交感神経は胸髄(T1L2)から出ており、主に「活動・緊張・ストレス応答」を担います。 副交感神経は脳幹(脳神経IIIVIIIXX)および仙髄(S2S4)から出ており、主に「休息・消化・回復」を担います。

背骨は神経の通り道であり、椎骨の歪みや関節の可動域制限や椎骨の歪みを矯正する必要があります。

【事例】 便秘・下痢を繰り返す方の場合
胃へ向かう交感神経は胸椎59番、腸へ向かう交感神経は胸椎10番~腰椎2番から出ています。この部位の脊椎に歪みがあると、消化器への神経伝達が乱れ、蠕動運動の異常として現れます。ただし、「時々」症状が変動する場合は、末梢神経だけでなく、中枢神経系(脳幹)の関与も考える必要があります。

 

中枢神経と末梢神経:どちらが問題か

神経は場所によって「中枢神経(脳・脊髄)」と「末梢神経(それ以外)」に分けられ、それぞれ影響の及ぶ範囲が異なります。

・中枢神経は全身・広範囲に及び、身体全体のバランス調整をします(例:深呼吸で全身がシャキッとする)

・抹消神経は局所的で特定部位や臓器に影響します。(例:正座で足が痺れる)

自律神経の不調の多くは、末梢神経だけでなく中枢神経にも問題を抱えていることがほとんどです。また、中枢神経は加齢とともに機能が低下しやすいため、積極的に刺激していくことが重要です。

【事例】 手足の冷えを訴える方の場合、末梢の血管収縮だけが原因であれば局所的な症状にとどまります。しかし「手も足も冷たい」「冬でも夏でも常に冷える」という全身症状の場合は、体温調節を統括している脳幹・視床下部などの中枢神経系の関与が強く疑われます。

脳神経(中枢神経)と自律神経の関係

脳幹から出る脳神経は、交感神経と副交感神経のバランスに直接影響します。

交感神経を活性化する神経

  • 動眼神経(第III脳神経)
  • 滑車神経(第IV脳神経)

交感神経を抑制する(副交感神経を促進する)神経

  • 三叉神経(第V脳神経)
  • 外転神経(第VI脳神経)
  • 顔面神経(第VII脳神経)
  • 内耳神経(第VIII脳神経)
  • 舌咽神経(第IX脳神経)
  • 迷走神経(第X脳神経)
  • 副神経(第XI脳神経)
  • 舌下神経(第XII脳神経)

これらは左右それぞれに存在し、左右差が生じると自律神経のアンバランスとして現れます。


*ここで表現している中枢神経は脳神経全てを指しています。脳神経12脳神経は3~12までは2次ニューロンとなるため正確には末梢神経ではありますが、当HPの趣旨としまして、患者さんがご自身の理解を深め、自分で体をコントロール出来る様になることを目標としています。その為、専門性を排除し断定的な表現にしています。

 

 

 

 

(例)目の使い方で起こる自律神経の不調

ブロックストリング

・「焦点」は自律神経を使って合わせます。

スマートフォンを長時間使用する方に多いのが、「眼精疲労に伴う自律神経の乱れ」です。焦点調節(輻輳・開散運動)は動眼神経が関与しており、これは交感神経を活性化させます。
右目と左目の「効き目・非効き目」の差が大きい場合、片側の動眼神経だけが過負荷になり、交感神経が一側性に過剰興奮します。その結果、頭痛・首こり・集中力低下・倦怠感などが生じることがあります。眼科的には「異常なし」と診断されるため、原因不明の不調として長期化するケースが少なくありません。

したがって、目の機能を改善することで、自律神経の改善にもつながります。眼科では「目の病気」を治療しますが、上記のような病気ではない「機能的な問題」は、リハビリによって改善が見込めます。

 

交感神経の過剰興奮 症状と背景

  • 睡眠:眠れない、夜中に起きてしまう
  • 消化:食後のだるさ。便秘、下痢がある
  • 認知・注意:注意散漫、物忘れ、思考の混乱
  • 疲労:易疲労、回復の遅れ
  • 感情:怒りやすい、感情制御の困難、不安感
  • 意欲:食欲、性欲、向上心の低下
  • 免疫:感染症の罹患しやすさ、アレルギーの悪化

交感神経が慢性的に過剰興奮すると、以下のような症状が現れます。

これらの症状は、交感神経の過剰興奮が引き起こすコルチゾール(ストレスホルモン)の慢性的な高値とも深く関連しています。

 

副交感神経(迷走神経)の低下が引き起こす問題

自律神経の不調は、多くの場合「交感神経の過剰」として現れますが、その根本には「副交感神経、特に迷走神経の機能低下」があることが多いです。

迷走神経(第X脳神経)は全副交感神経線維の約75%を占め、心臓・肺・消化器・肝臓など多くの臓器を支配しています。この神経の機能低下は、以下のような広範な問題を引き起こします。

  • 交感神経の慢性的な過活動
  • 末梢循環不全(血流障害)
  • 消化不良・食物不耐性(リーキーガット症候群の一因)
  • 排泄機能の不規則化
  • 腸内ガスの貯留・腹部膨満感
  • 炎症の慢性化(迷走神経は抗炎症反射にも関与)
  • 免疫機能の低下・自己免疫疾患リスクの上昇
  • 気分の落ち込み・意欲の低下

また、迷走神経には「腹側迷走神経複合体」と「背側迷走神経複合体」の2種類があります。ポリベーガル理論(Stephen Porges博士)によると、腹側迷走神経は社会的交流・情緒の安定・共感能力と深く関連していると主張する研究者もいます。良好な人間関係や安心感のある環境によって発達する神経であり、逆にこの神経が機能低下すると、対人関係の困難・情緒不安定・孤立感などが生じやすくなると言われています。

【事例】 40代男性。仕事のストレスが続いてから、胃腸の不調・慢性的な疲労感・人と会うのが億劫になる症状が重なった。これは交感神経の過活動と腹側迷走神経の機能低下が複合的に起きている状態と考えられます。消化器症状と対人回避が同時に現れるのは、迷走神経が消化器系と社会的行動の両方に関与している可能性が示唆されている為です。

 

参孝文献

・マッコリー LK.自律神経系の生理学。 J Pharm Educ 2007.自律神経の総説

・スタットパール。自律神経失調症。 NCBIの本棚。 自律神経の定義と基本機能の概説

・今井 J, 他自律神経系による全身代謝の調節。 2022. 代謝と自律神経の関係

・「心血管自律機能の概日リズム」。 2019. 概日リズムと自律神経の関係

・Tracey KJ 系のレビューや迷走神経と炎症反射は、免疫との関係の根拠

・McCorry LK. 自律神経系の生理学。Am J Pharm Educ . 2007.

・自律神経機能障害。StatPearlsNCBI Bookshelf

・厚生労働省「ホメオスターシスについて」

・今井 淳ほか。自律神経系による全身代謝の調節。

・心血管自律神経機能の概日リズム。