自律神経の調整
自律神経の調整(目次)
はじめに
1、自律神経の概要
2、自律神経の「不調」と「病」の違い
3、使われていない自律神経はどこか?
4、中枢か抹消か
5、事例紹介
6、中枢神経への刺激
(例)目の使い方で起こる自律神経の不調
7、交感神経が過剰に働いている方の特徴
8、副交感神経(迷走神経)の活動低下が起こす問題
*全体的な概要をさらっと掴んでもらい、ご自身の自律神経に関わる部分は、検査を通じてご説明します。
はじめに
自律神経も運動神経と同様に、「神経」は使えば強化され、使っていないと機能しなくなります。
例えば「スポーツ」は練習するほど上達します。これは「神経回路が反復刺激により強化された。その結果、スポーツに必要な身体の動かし方が上達した」という事になりますす。
逆に、何もしないと出来なくなるのは「刺激がなくなった為、神経回路が消失し、身体を適切に動かせなくなった」ということになります。
「自律神経」も、使えば強化され、使わなければ消失します。自律神経の不調は、使わなくなった神経の問題です
1、自律神経の概要
自律神経は沢山あります。自律神経について、ざっくり説明しますと
・交感神経
・副交感神経
があります。これらを合わせて自律神経です。これは「二つ」あるという意味ではなく、二種類に分けられる。という意味で、自律神経自体は沢山あります。
「男性」と「女性」のように、生物学的に2種類ですが人数は沢山いて、いかにも男性的・女性的な人もいれば中性的な人もいる。というイメージです。
「神経」は機械部品の様に一つだけ悪くなったりしません。それぞれの神経が、総合的に作用して身体の平衡を保っています。
身体の体調が大きく崩れないように、機能が低下している自律神経があると、他の自律神経の仕事量が増えます。
また、使われない神経はやがて消失します。
ですので、初期の体調不良は神経が過敏に反応することで低下を防ごうとしますが、臨界点を超えると一気に悪くなるのです。
2、自律神経の「不調」と「病」の違い
自律神経の役割は、臓器などに作用を及ぼします。
そしてその臓器は、ホルモンを分泌し免疫も作ります。自律神経がうまくは働かないと言う事は、内臓がうまく働かない。
よって、免疫やホルモン分泌に問題が起きて不調になる。という訳です。
「不調」が長く続くと、内臓機能やホルモン分泌の異常が続く状態になり、やがて正常な機能が失われます。これが「病」です。そうなると、機能を補填する必要があります。それが“お薬”です。この段階になると「病名」がつきます。
その前の段階、つまり自律神経が何らかの問題を起こしている段階では「病」ではないのです。医師から病名を告げられないけど不調があるのは、この段階です。
このように「不調」の段階と「病」の段階はまったく別物です。
・自律神経の機能訓練をすることで、神経回路が強化できる段階
・神経回路がつながる機会を逸してしまい「病」になった段階
どの段階かによって、必要な治療法は違います。
「病」になる前の段階で、自律神経は問題を抱えています。
使われていない自律神経を特定し積極的に使用することで、その機能は再構築されていきます。
使われていない自律神経はどこか?
自律神経の場所は
・交感神経は胸から腰
・副交感神経は頭、骨盤
にあります。この沢山ある「自律神経の場所」の中から
・気になる症状は何か?
・特に改善の余地がある所はどこか?
などを総合的に判断して、最も有効な自律神経のアプローチポイントを特定していきます。
上図のように、臓器は全て自律神経にコントロールされます。
ホルモンは脳や臓器から分泌されます。感情や体調はホルモン分泌に影響を受けます。
したがって、不調の多い場所は自律神経が関与しているかもしれません。
脊椎の矯正した箇所(検査で陽性反応が出た箇所)は、自律神経にも異常信号を送っているかもしれません。
脊椎は神経の通り道ですので
・運動神経の問題は、緊張や脱力感
・感覚神経の問題は、しびれや違和感
・自律神経の問題は、内臓やホルモン分泌など総合的な問題
など、様々な問題を起こす可能性が有ります。
その為、当院では背骨を一つ一つ検査をして、問題部位を矯正します。
「運動をした方が良い」「体は柔らかい方が良い」と言われるのも、背骨を動かすと神経に刺激が入るからでもあります。
4、中枢か抹消か
「神経」は働きによって3つに分けられます。
1、体を動かすのは運動神経
2、感覚を感じるのは感覚神経
3、体全体の調節は自律神経
そして、「神経」を場所で分けると
・中枢神経
・末梢神経
に分けられます。
中枢神経は脳と脊髄です。末梢神経はそれ以外です。
中枢神経は全体に影響し、末梢神経は局所的に影響します。
<中枢神経>
(例)深呼吸すると、頭も体もシャキッとします。
→「深呼吸」という行為が「中枢神経」を刺激し、「頭や体」に「シャキッ」という「全身症状」を引き起こされたのです。
<末梢神経>
(例)正座すると、足が痺れる
→「正座」という行為が「末梢神経」を刺激し、「足がしびれる」という「局所的」な症状が引き起こされたのです。
*「脳」にある中枢神経は体全体多くの部分に波及するのに対し、末梢神経は局所的な影響があります。したがって、自律神経の症状でも、中枢神経由来か末梢神経由来かによって治療方法は変わってきます。
5、事例紹介
ケース1)便秘、下痢がある
胃へ向かう神経は胸椎5~9。腸へ向かう神経は胸椎10~腰痛2なので、抹消神経由来ならばそこを矯正します。
さらに、「『時々』便秘、下痢になる」の場合は、中枢神経由来も考えられます。
このようなバイオリズムの不調は、中枢系も関与します。
また、手足が冷たいなどの症状が出れば、これは全身症状です。つまり中枢神経由来の可能性が大きくなります。
自律神経の不調の多くは、末梢神経のみが原因となることはあまり見られず、中枢神経にも何らかの機能的な問題を抱えていることが多いため、中枢神経系トレーニングも必要になります。
*医療従事者の方へ
ここで表現している“中枢神経”は脳神経全てを指しています。
脳神経は3~12までは2次ニューロンとなるため、正確には末梢神経ではありますが、当HPの趣旨としまして、患者さんがご自身の理解を深め、自分で体をコントロール出来る様になることを目標としています。その為、専門性を排除し敢えて断定的な表現にしています。
6、中枢神経への刺激
中枢神経は図にある神経のことを指しています。
ざっくり言うと・・・
・動眼神経と滑車神経は交感神経の活動を高めます。
・三叉、外転、顔面、聴神経は交感神経の活動を抑えます。
・舌咽、迷走、副、舌下神経も交感神経の活動を抑えます。
このような働きが左右それぞれにあり、体全体に影響を及ぼします。
リハビリでは「神経の場所」「刺激強度」を決めていきますので、日頃から反復練習してみてください。
検査の後、
・どの機能を改善したほうが良いのか
・どの機能が、体に影響を及ぼしている可能性があるのか
を、お伝えします。機能によってはリハビリメニューを頻繁に変えたほうが良いものと、継続して同じことを繰り返したほうが良いものがあります。
*知っていること < 理解すること < 出来る様になること
これがリハビリの考え方になります。日常に取り込んでください。
(例)目の使い方で起こる自律神経の不調
焦点を合わせるのは自律神経
目の調整の大部分は自律神経によって行われます。
視機能に問題があると、自律神経にも問題が生じやすくなります。したがって、目の機能を改善することで、自律神経の改善にもつながります。
目の調整とは、両目で「焦点」を合わせることです。
例えば、「鼻」を見ると寄り目になります。
このように私たちは、両方の目を寄せて「焦点」を合わせようとする働きがあります。
これは、「鼻」など極端に近い距離に焦点を合わせる時だけではなく、
・20センチの距離にあるスマホ
・40センチの距離にあるパソコン
・1メートルの距離にある人の顔
などそれぞれの距離に応じて「寄り目」をして焦点を合わせています。
この焦点を合わせる働きに、自律神経が関与しています。
左右の目に見え方の差があったり、効き目と非効き目の差が大きいと、下記のような症状が出ることがあります
・目が疲れやすい
・目の奥が緊張する
・目を使いすぎると、何らかの不調がある
眼科では「目の病気」を治療しますが、上記のような「機能的な問題」は病気ではないので、リハビリによって改善する必要があります。
6、交感神経が過剰に働いている方の特徴
- 睡眠:眠れない、夜中に起きてしまう
- 消化:食後のだるさ。便秘、下痢がある
- 認知・注意:注意散漫、物忘れがひどい
- 疲労:疲れやすい
- 感情:怒りやすい、感情のコントロールが難しい
- 意欲:食欲、性欲がない
- 免疫:風邪をひきやすい。
7、副交感神経(迷走神経)の活動低下が起こす問題
自律神経は不調は、
1、交感神経の過剰
2、副交感神経が低下し、交感神経を抑制出来ない
3、交感神経と副交感神経、両方活動低下している
など、様々です。
「迷走神経」という神経が、副交感神経の中で大きな割合を占めるので、迷走神経の問題について列挙します。
- 交感神経の過活動
- 血流不全
- 消化器の不快感
- 消化不良・食物不耐性
- 排泄不全・不定期
- 腹部膨張感・ガス
- 炎症の慢性化
- リーキーガット・リーキーブレイン
- 免疫力の低下
- 自己免疫疾患
- 気分の落ち込み